スカーレットの悪女
「さあ壱華さん、行きましょう」

「壱華、行くな!」

「やめて壱華、行かないで!」



自分から西雲に行くなんて、そんなのダメだ。


もう運命の歯車は大きく狂ってしまっている。


原作で攫われたあとも無事だったからと言って、今後壱華が安全でいられる保証はどこにもない。


佐々木はもう一度壱華に手を伸ばすと、部下と思われる男が近づいてきて、不意打ちで志勇の首にスタンガンを当てた。



「志勇!」

「安心しください、殺傷能力は低いです」



志勇はたまらず膝をつき、颯馬はもう一人の部下に羽交い絞めされて拘束された。


佐々木は壱華の腕を引くと、視線で車に乗れと命じた。



「動くと彼女を撃ちます」



もう一度懐から銃を取り出した佐々木は、私に銃を突き付け、駆けつけようとしていた手負いの理叶たちも身動きが取れなかった。


妹が死ぬかもしれない。その恐怖が壱華にとって、西雲について行く一番の決め手になった。


苦しそうに顔を歪めると私たちに背中を向け、自分の足で車に乗り込んだ。
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