スカーレットの悪女
直接その目で見つめられ、うまく息ができなくなり、私は両手を合わせて強く握った。


これが非道の覇王、望月大希。


耐えがたい気迫に目を逸らしたいのに、自分の意志では不可能だ。


まさに格が違う。私は震え出した手をさらに強く握りしめて必死に耐えた。



「返り血浴びて冷静でおれるなんて上等やん、えらいなあ」



何をしでかすか分からない瞳で私を見て、望月は私にそっと手を伸ばした。


殴られる気がしてぎゅっと目をつぶると、頭頂部に手を置かれ数回撫でられた。


冷たい手だった。いつこの手に命を奪われるか分からないような、そんな恐ろしい手。


過度に恐れるな、気を強く持て。私には壱華を守る使命がある。


私はぐっと唇を噛んで高い位置にある望月の顔を見上げた。



「その目は気に入らへんけど。まあええわ」



望月は片方の口の端を上げ、私から興味を失ったように離れていった。



「ふたりに服用意したって〜」



望月は背を見せると、手をひらひら振りながら部屋を出ていった。


一気に緊張が抜け、私はしばらくへたりこんで動けなかった。
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