スカーレットの悪女
この声、望月だ。


だけど声を発するまでまるで気配がなくて、私は驚いて振り返った。


振り返ると、腕を組んで入り口の障子に寄りかかっている望月がそこにいた。


障子を開けたことも気が付かなかったなんて。


望月は後ろ手に障子を閉めると、悠然と部屋の中に入ってきた。



「壱華は私の唯一の家族です。血の繋がりは関係ない」



一直線に壱華に近づいてくるから、守るように立ちはだかった。


顔の位置が遠い。志勇ですら見上げるのが大変だったのに、望月はもっと見上げないといけないから大変だ。


きっと望月の視点から見ると私は小人のようで滑稽に見えることだろう。


それよりこの男、何しに来たの?


壱華は見ての通り寝てるから話はできない状態なのに。
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