スカーレットの悪女
「壱華まだ寝てるん?熱下がった?」

「38度から下がりません。話すのは無理だと思います」

「ふーん、そう」



高い位置から壱華を見下ろしていた望月は、ふと腰を屈めると私と目線を合わせた。



「昨日畳の上で寝落ちしてたやろ。いくらお姉ちゃんが心配やからって、風邪引くからあかんで」

「え……」

「ほら、ほっぺたに畳の痕がついとるやん」



なんで望月がそれを知ってるんだろう。もしかして昨日毛布を用意してくれたのってこの男だったの?


ほんの少しときめいたけど、無断で顔を触られそうになって顔を背けた。


望月の手は怖い。


その大きな手にかかれば、私の細い首なんてひとたまりもないだろう。
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