スカーレットの悪女
オーラと威圧感を前に本能的に危機感を覚え、私は目を見つめたまま後ずさりした。


眼光の鋭さは、さながら孤高の狼。


目を逸らしてはいけない、逸らせば最後、この冷酷な狼に喰われる。


逃げるな、ここで対峙しないといけないのは分かってるんだから。


向こうから来てくれたならば、好都合だ。



だけど私は不安で仕方なかった。


冷酷無慈悲な死んだ目をした男が、どうやって壱華に出会って愛を見出したんだろう。


……こんな奴が、本当に壱華を守ってくれるの?


眼光ひとつで人を殺せそうな雰囲気を醸し出してるこの男が?


さっきからずっと手の震えが止まらない。



「……私に、なんのご用でしょうか」

「相川実莉……壱華の妹か」



意を決して毅然とした態度で話しかけると、志勇は目線だけ動かして呟いた。


それだけで心臓を鷲掴みにされたような感覚がして手をぎゅっと握った。
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