スカーレットの悪女
「よう調べてんな。じゃあ、西雲がこうして壱華を攫った理由も知ってんねや」



感心したように大げさに頷く望月。


私は言葉には出さず、目を伏せることで知っていると答えた。



衰退した西雲が壱華を欲しがっていた理由はただひとつ。


壱華と望月大希を結婚させることで、西雲の再興を目論んでいるのだ。


愚かな上層部は、伝統が西雲を弱体化させたくせに、望月の正統な血を引く壱華を迎え入れればすべて丸く収まると思っているらしい。



「けど、そこまで知ってんのに、のこのこ着いてくるなんてアホやな。壱華が西の手に落ちた以上、実莉ちゃんも安全の保証はないのに」



真実を語ったところで望月はどう出るのだろうと伺っていたら、腰を曲げてずいっと顔を近づけ、不気味に微笑んだ。
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