スカーレットの悪女
「お前は……相川壱華の秘密を知ってるのか?」

「知っていたら、私を消しますか?」



だけど負けていられない。


私の存在意義は壱華。


壱華を救うために、こんなところで諦めるな。


決死の覚悟で口を開くと、彼の口元がゆっくり弧を描いていき、表情が変わった。


おぞましくも妖艶な笑みだった。



「……ほう、威勢がいいな」

「父は、それを知った上で壱華を養子に迎え入れたんです。
壱華は私の唯一の家族、あの子を利用して何か企んでいるつもりなら、絶対許しません」

「知っていたからとして、お前みたいなチビガキに何ができる?」



会話のラリーを続けるうちに、こいつは私をどうこうしたいわけではないと悟った。


探りを入れてるんだ、私がどういう人間なのか。


分かってる、その通り私は何もできない。


だけどできないから足掻いてきたんだ。
< 46 / 807 >

この作品をシェア

pagetop