スカーレットの悪女
壱華とはまた違う、人たらしの魔性。


時に俺より冷徹な颯馬が実莉をがばうのはその魔性に当てられたせいだろう。


人の心を掌握し、底抜けの明るさで味方を増やす世渡り上手。


そのくせ、あいつは自分自身にまるで興味がなかった。


全ての行動には壱華が絡んでいて、なにやら使命感を持っているようだった。


壱華に対する愛情は間違いなく本物で、壱華を想うからこそ言えない事情があったのだろう。


謎の多い実莉について考えていると、開け放したドアの向こうから物音がした。



「誰だ」



声をかけると、そいつはゆっくりと俺たちの前に姿を現す。


華奢な体、青白い肌、生気のない淀んだ目。


そこに立っていたのは、生き残った神木のせがれ、凛太朗だった。
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