スカーレットの悪女
「あんたが壱華に執着なんてしなければ、兄貴は死ななかった。
壱華が生きていたから俺の家族は殺されたんだ。
西雲の隠し子なんて存在しなければ……組は潰れなかった！」



死人のような顔色で責め立てる凛太朗。



悲痛な叫びに顔を歪め、俺を睨みつける姿は強い憎しみで支配されていた。


荒瀬の若頭に生まれて、このような場面に遭遇することはよくある。


怨恨に支配された人間の相手をするのは時間の無駄だ。


壱華に出会う前の俺ならそう感じ、即刻凛太朗を排除したことだろう。


俺が多少丸くなったということもあるが、齢13という幼さで俺を恐れずに感情をぶつけるその気概は感心した。


そして、絶望の淵で闇に染まっているはずの目がなぜ強い光を放つのか疑問に思った。


その目に実莉と同じものを感じた。
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