スカーレットの悪女
「壱華に出会っていなければ、お前はとっくの昔に死んでいただろうよ」

「いっそ殺してくれ……こんな地獄で、どう生きろっていうんだ」



接近しても怯えず、後ずさりもしない。


あの実莉ですら初めて会ったときは後ずさりをしていたが、このガキは無念に拳を握り目を伏せるのみ。


……このガキ、使えるかもしれない。ふと興味が湧いた。



俺は片手を伸ばし、震える体をたぐり寄せ、そいつの頭を俺の胸に押し付けた。



「え、兄貴?」



てっきり俺がこいつを制裁を加えると思っていた颯馬は後ろで間抜けな声を上げた。


俺自身、なぜこんなことをしたのか分からない。


興味が湧いたとともに同情してしまったのは、壱華と実莉の関係性を見て来たからだろう。
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