スカーレットの悪女
「な、何するんだ!」



抱き寄せられたことに驚いた凛太朗は、俺を突き飛ばして拘束から抜け出す。


俺はすかさず腕を掴み、その顔を真正面から見つめた。



「てめえは兄貴の死を無駄にするのかよ」

「兄ちゃんのいない世界に生きる意味なんてない……俺のために生きて欲しかった……」



見据えた凛太朗の顔が歪んでいき、その大きな目から涙がこぼれ落ちた。


ただ、視線を俺から離すことはなかった。



「お前に残された道はふたつだ。兄貴の後追いをするか、極山に報復するか」



試しに提案をしてみると、凛太朗は顔色を変えた。


自殺を選べば引き止めない。それだけの男だったということだ。



「後者を選べば、復讐を手伝ってやろう」



しかし、チャンスがあるならどうだ?


お前にとってはまたとない幸運だろう。
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