スカーレットの悪女
「……いい香り」



恐る恐るカップを持ち上げると、爽やかな香りが鼻を抜ける。


オレンジフラワーって言ったっけ。フローラルな香りの中に、ほんのり柑橘系の香りがした。


幹奈がよく淹れてくれたハーブティー、か。


20年前に失踪した人なのに、それを覚えているということは、幹奈は望月にとって大切な人だったんだ。



「望月幹奈ってどんな人だったの?」



私はマグカップで手を温めながら望月に訊いてみた。


望月はもうひとつのマグカップにハーブティーを注ぐと、自分の口に運んでひとくち飲んだ。



「顔は壱華そっくり。性格は壱華と実莉ちゃん、足して2で割った感じ」



壱華が幹奈によく似ていることは原作を読んでいたので知っている。


しかし、性格については言及されてなかったから驚いた。


てっきり壱華みたいにおしとやかなご令嬢だと思ってた。
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