スカーレットの悪女
「うーん、壱華ほどの大和撫子じゃなくて、私ほどはちゃけてないってこと?ほどよく元気なお嬢様?」

「あっは、自分のことはっちゃけてるって自覚あるん?まあ、そんな感じやな。朗らかでよく笑う人やった」



望月は歯を見せてからかうように笑うと、それからひとつため息をついて懐かしむように天井を眺めた。



「生みの母に対してあんまりいい記憶ないから、優しい幹奈が母ちゃんになってくれるなら幸せやなって思ったけど、そうはいかんかった」

「……」

「おかげで、親父も俺も苦労したわ」



私は望月の過去を知らない。


だけど、正当な本家の血筋ではない跡継ぎがいかに冷遇されてきたかは容易に想像できる。



「それでも会いたいって思うねん、もう二度と会えへんのに」

「……好きだったんだね」



ソファの背もたれに体重をかけてぽつりと呟いた望月。


その気持ちに同調しようとすると、望月は不意に背筋を伸ばした。
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