スカーレットの悪女
「それだけ弟が大切やったんやろうな」



ただの独り言だと受け流されても仕方ないのに、望月は意外にも返答してくれた。



「大方、極山に天秤にかけられたんやろうな。弟か家族か、どっちを選んでも破滅しかない選択肢。
で、分かった上であのガキは弟を選んだ」



的を得た推理に私の心は揺れた。


いっそ、裏切りなんて裏社会では日常茶飯事だ、そんなことで悩むな、と突き放してほしかった。


非道の覇王と呼ばれる男が、神木の内情まで考えられるほど柔軟で人間味のある回答をすると思わなかった。



「死に方を自分で選べただけ、まだ幸せやろ」



続く言葉に一理あると思った。


同時に、優人を救えなかったのに私の気持ちだけ救われた気がして、罪悪感に胸が苦しかった。
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