スカーレットの悪女
「わかった、触らん、なんもせえへん。そんな震えんで」

「志勇は……?」

「へえ、真っ先に妹の心配するかと思ったけど、壱華は違うんや」



志勇の安否を尋ねる壱華に対して、不気味に口の端を上げ、愉悦の表情を見せる望月。


その視線は私に向けられていた。


壱華にとっての一番は私じゃないとでも言いたいわけ?


ふん、私たちがどれだけ固い絆で結ばれてるか知らないくせに。



「実莉はここにいるんですよね。夢うつつに手を握ってくれたのを覚えてます」

「……ほう」



ほら見ろ、壱華は私が無事だって分かってたから志勇のことを訊いたんだ。


襖の隙間から勝ち誇ったように顎を突き出してドヤ顔をかますと、その顔が面白かったのか望月は「ぶはっ、必死やん」、そう吹き出しながら言っていた。


なんかとことん腹立つな。昨日の望月は幻覚か?
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