スカーレットの悪女
望月は噛まれた手を引っ込めて、その後まじまじと噛んだ部分を見つめている。



「狂暴やな噛みつくなんて。人慣れしてへん猫ちゃんみたい。見て赤星、歯型ついた」



やばい、さすがに怒るかもと思ったけど、望月は頬をゆるませて赤星に噛まれた手を見せつけていた。


しかし、赤星は無表情のまま顎を引いた。



「なんやねんその反応」

「噛みつかれて嬉しそうな大希が気持ち悪いです」

「もう一変整形させて今度は海外にでも送り込んだろか」

「笑ってると怖さ半減ですよ」



はたから見ると、とんでもない会話。


しかし、このふたりにとってはブラックジョークらしい。


赤星が平然としているのがその証拠だ。



「ねえ、壱華に何を話す気！？」

「別に？自己紹介しに来ただけ。あと、脱走しないように釘さしとこ、と思って」



そんなことより壱華に何を語る気なのか。


私が詰め寄ると、望月があっけらかんと手の内を明かして興味なさそうに壱華を見つめた。
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