スカーレットの悪女
興味ないならわざとボディタッチするなよと思ったけど、望月に構っていると日が暮れると思って壱華に近づいて抱き着いた。



「壱華、志勇は無事だよ。撃たれたみんな無事だって」

「よかった……」



安心させるように密着すると、壱華は震えた手で私の背中に手を回す。


壱華は本当に優しい。あんな悲惨な光景を目にしてショックが大きいはずなのに、真っ先に他人のことを心配するなんて。


もうこれ以上壱華に心労をかけさせたくない。


壱華のことは、私が全力で守るんだ。


そう決意して強く抱きしめると「ええ姉妹やな」なんて望月が泣きまねしつつ茶化してきたから歯をむき出しにする。



「実莉ちゃん今日表情豊かやな」

「うるさい、ちょっと黙ってて!」

「はいはい、姉妹水入らずでどうぞ」



望月はまったくひるまなかったけど、一応配慮して距離をとってくれたから、壱華の震えが収まるまで抱き合っていた。
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