スカーレットの悪女
「荒瀬志勇のことなら安心せえ、ちゃんと生きてるで。
無傷じゃあないけど。まああいつのことや、3日で治すやろ」



数分間抱擁をしていると、望月は壱華じゃなくて私の背中をさすってきた。


なんで私にちょっかいかけるの?


疑問に思いつつその手を払いのけようとすると、私の手が震えていることに気が付いた。


望月は震えている私を気にかけてくれたのか。


きっと普通の女子ならときめくんだろうけど、私は望月の二面性を知っているから観察眼に優れてるな、としか思わなかった。



「3日ではさすがの帝王も無理かと思いますが……」



すると、入り口にいたはずの赤星が足音もなく近づいてきて壱華の顔をじっと観察する。


壱華は顔を強張らせて私を抱き寄せた。



「……落ち着いてください。ここにはあなたに危害を加えようとする者はいない」

「あなたの言葉が一番信用できません。あなたは私の大切な人を目の前で撃った」

「あのまま膠着状態であれば、あの場にいた全員が殺されていたはずです。壱華様のためにも、強引ですが引き離すしかなかった」



今の壱華は真実を知らない。


だけどある程度察しはついているのか、壱華のためと言われて口を閉ざした。
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