スカーレットの悪女
「それと、挨拶がまだでしたね。初めまして、相川壱華様。私は赤星と申します」



赤星は無駄のないきびきびとした所作で壱華に頭を下げる。


壱華は志勇を撃った彼を信用できないらしく、挨拶に答えずにすぐ視線をそらしていた。



「荒瀬志勇の怪我は命にかかわるものではありません。急所は外しました、1ヶ月もすればあの方も動けるようになるかと」



そう言われても、あんな淡々と人を撃つ男の言葉なんて信じられないよね。



「なんや、いきなり堅苦しい挨拶しよって。まだ俺が壱華と話よる最中やねん」



まだ私の背中をさすっている望月は、横槍を入れられたことに貞腐れていた。


壱華はまるで子どもをあやすみたいに私に触れる望月を見て、不可解だと言わんばかりの顔をした。



「あなたは……?」

「ああ、俺は望月大希(もちづきたいき)。よろしゅうな」

「出た、わざとらしい関西弁」

「ほんま思ったこと全部口から出てくるな実莉ちゃん。その細い首に噛み痕つけたろか」

「いやー!変態!」



悪い癖が働いでぼそっと口走ると、望月にぐいっと襟首をつかまれて壱華と引き離された。
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