スカーレットの悪女
「先に噛みついてきたのそっちやん」

「あんた犬歯尖ってて痛そうだから嫌!ばっちい!」

「んはっ、必死な顔でばっちいなんて言ってもかわいいだけやで」



まずい、望月の変なスイッチを押してしまった。


満面の笑みで焦りまくる私の顔を観察している。


私より壱華に興味があるはずなのに、壱華そっちのけで私に構ってくるのなんで?


どうしようこの状況。赤星さんに目線で助けを求めたけど薄情にも目を逸らされた。



「望月、さん。ここは……どこですか?」



その時、混乱している様子の壱華が望月に質問を繰り出した。


すると今度はニヒルに、危険な笑みをつくる。


打って変わった表情に背筋がぞくっとした。



「ここは、大阪。虎と呼ばれる覇王が根城とする、西雲会の総本家や」

「……統帥(とうすい)を差し置いて自負するとは、恥ずかしくないのですか」



決め台詞のように言ってのけたけど、速攻で赤星につっこまれて望月は微妙な顔をした。
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