スカーレットの悪女
「うっさいわ!カッコつけたってええやろ。
自分、東京に住んでたからって、大阪の人間馬鹿にするクセついてるんとちゃう?」

「馬鹿にはしていません。指摘したまでです」

「あっそ。せやな、お前はそういう奴やったわ」



望月は「さっきからなんかカッコつかんわあ」と私と赤星の顔を交互に見て不服そう。



「あなたが『覇王』?」



しかし、ここまでぐだぐだな空気でも壱華は核心に迫ろうとしている。



「まあ、一部ではそう呼ばれてるらしいな」

「いまさら、わたしを攫って何がしたいの?」



私は壱華が真実を知ってしまうことが怖くて、とっさに大げさに身をよじって注目を集めた。



「ねえ、離して!トイレ行かせて、もれる!」

「……はあ、今日はやめよ。もうぐだぐだやん」



望月はついに真相を語るのをあきらめてくれたらしく、私の服を離すと壱華に対して指を差した。



「ニュース見りゃ分かるやろうけど、荒瀬と極山の抗争が始まってる。
俺らは壱華を一時的に保護する目的でここに連れて来たわけやから、逃げようなんて思わんことやな」



そう言うと望月は立ち上げって壱華の部屋を出ていった。


私は「壱華、病み上がりなんだから今日はゆっくり寝ててね」と声をかけて、本当にトイレに行きたくなったのでその場を離れた。
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