スカーレットの悪女
「壱華は何も悪くない、大丈夫だよ」



私は精いっぱい優しく声をかけて、一定のリズムで背中を叩く。


次第に壱華は落ち着いてきたから「今は生き抜くことだけ考えよう」と声をかけて、泣き疲れた壱華が眠りに着くまで見守っていた。


数日熱にうなされて、さらに目が覚めたら見知らぬ場所で監視される日々。


眠れてないのだろう、目の下のクマがそれを証明していた。


私は寝静まった壱華の顔を見つめ、やがて怒りを覚えた。


壱華に真実を語ったのは望月だ。


あの男は何を考えているのだろう。


あいつの口ぶりからして、壱華を利用する気はあっても、西雲の思惑通りに壱華を妻として迎え入れる気はないようだ。


ならば壱華に真実を教える道理はない。


壱華を翻弄させる意味がないのに、なぜ揺さぶるの?


別の使い道を企んでいるのか。


なんにせよ、純粋な壱華を利用するなんて許せない。
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