スカーレットの悪女
「いっ……」



あと少しでも力を入れれば顎が折れそうなほど強い力だった。


私が怯んだ隙に望月は立ち上がり、痛がる私の顔を冷淡な表情で見下している。


これが西の虎の本性……その目には明確な殺気を含まれていた。



「お前みたいな利口ぶったガキがいっちゃん嫌いやねん」



ついに感情に任せて心情を吐き出した望月。


その一方で手の力を緩めたから、私は本能的な恐怖に震える中で不思議に思った。


まるで反論してみろ、とでも言いたげな素振りだ。



「その利口ぶったガキにムキになってどうすんの?」



一か八か、可能性に賭けて語気を強めて煽る。


恐怖に押し負けて、望月に伝わりそうなくらい心臓がバクバク脈を打つ。


でも目を逸らしたらダメだ。背を向けたら食われる。本能がそう言ってる。


私は一心にその目を見つめ、望月からの返答を待った。
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