スカーレットの悪女
「で、俺の名前呼んでくれへんの?」



望月は話を戻して名前を呼べと急かす。



「私たちを一刻も早く東京に返してくれるなら考える」

「それは極山の出方次第やろ。もう極山が劣勢みたいやから荒瀬の勝利はほぼ確定やけど」



遠回しに無理と言われたから、意表を突いて聞き出すことにした。



「私が言ってるのはそっちじゃない」

「そっちじゃないって?」

「ネタ上がってるんでしょ?早く極山を弱体化させる方法」



とぼけるつもりみたいだから、望月の耳にぐっと顔を近づけた。



「ねえ大希、もっと頑張って?」



なぜか私のことお気に入りみたいだから、あからさまな態度を取ったら嫌いになってくれないかなと思った。



「……小悪魔すぎるやろ、ずるいわ」



しかし、予想外の展開に望月は目を泳がせて動揺している。


ハニートラップへの耐性がありそうだから、鬱陶しさに幻滅してくれないかと期待したのに。
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