スカーレットの悪女
「……実莉、落ち着け」



なんと間に入ってきたのは理叶だった。


私を守るように前に立った理叶は、落ち着けと声をかけてきた。


私は意味が分からなくて、志勇と対峙した時よりも焦った。


だって理叶は、荒瀬兄弟に歯向かうことなんてしなかったはず。


理叶にとってこの2人は恐怖の対象でしかないから。



「理叶、邪魔する気かよ」

「申し訳ありません、お引き取り願います」

「嫌だって言ったら?」

「これ以上は不毛だと、お二人なら分かったでしょう」



距離を詰める颯馬の顔が目の前に来ても、理叶は微動だにしない。


淡々と対応している様子につまらないと思ったのか、颯馬は目を逸らした。
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