スカーレットの悪女
「整形させてスパイ活動なんてドラマみたいって思ったやろ?けどなあ、あいつら元々顔が似てたんや。
二重にして鼻整えたら、もう佐々木そっくりに仕上がって俺もびっくりしたわ」



望月は任務に失敗した赤星を利用するためじゃなくて、いつか再び側近として傍に置くために殺さないで済む手段を選んだのか。


それは狂気じゃない、愛だ。



「……ごめんなさい」

「え、何が?」

「大希のこと、誤解してた」

「世間の評価はあながち間違ってへんよ。俺が甘いのは限られた身内だけやから」



これだけ懐の深い男なら、赤星が慕うのは当然だ。


極道という常識外れの世界で生まれて、人の何倍も苦労して、痛みを知って、ここまで生き抜いてきた過程を想像するといたたまれない。


今まで、危険な男だと彼の本質を見向きもせず犬猿していたのが申し訳なくなった。


しゅんとうなだれて反省すると、「実莉は真面目やなあ」なんて間延びした声で抱き寄せるから、ちょっとだけ泣きそうになった。
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