スカーレットの悪女
酒臭いしタバコくさい。


ああ、そういえばお偉いさんの接待がどうこうって言ってたっけ。



「実莉、もう風呂入ったん?一緒に入りたかった~」

「キモッ、絶対無理だから」

「えー?俺頑張ったんやで?ジジイどもの長い話をのらりくらりとかわして、キレそうな親父なだめて場を丸く治めて……」



ここに来て知ったのは、大希は意外と苦労人らしいということ。


同じ若頭でも志勇と全然違う。


志勇が傍若無人なのは、荒瀬の正統な血を引く嫡男ってこともあるんだろう。


大希は後ろ盾がないから、地道に力をつけていくしかなかったんだ。



「ちょっと、私の布団なんだけど」



大希が苦労してるのは分かったけど、それとこれは違う。


私の寝床を嫌な臭いで汚染しないでほしい。



「言うたやん、電話させてあげる代わりに実莉に癒してもらうって。ほれ、早く俺のこと癒して」



大の字で寝て移動する気が全然ない。


私はため息をついて、それから仕方なく大希の頭をなでた。
< 518 / 807 >

この作品をシェア

pagetop