スカーレットの悪女
壱華を抱きしめると、雅は思いっきり舌打ちをして私たちに近づいてきた。



「大希さんがある程度気に入ってはるからって調子乗るんやないで」



そしてなぜか壱華にガンを飛ばしている。


もしかして、大希のお気に入りが私じゃなくて壱華だと思ってる?


壱華にとってはとんだとばっちりだ!すぐ訂正しないと。



「雅、俺のお気に入りはこっち」



すると、大希が間に入ってきて、腰を落とすと私の脇の下に手を入れて持ち上げた。


突然のことで声が出ず、高くなった視界に人間に持ち上げられた猫の気分だった。


大希はくるっと反転して、雅の正面に私を持ち上げたまま見せつける。


雅の端正な顔はみるみる歪んでいった。



「こんなけったいなちんちくりんが大希さんのお気に入り……?」

「何この人怖い、おろして」

「ありゃ珍しい、実莉が怯えてる」



今にも殴られそうな気がして暴れると大希は離してくれたから、さっと大希の後ろに隠れた。
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