スカーレットの悪女
「えっ、たすくって言うんだ!」

「へえ、右腕の名前も知らんくせに大希さんの隣陣取ってるん?いいご身分やなあ」



それにしても、この雅とかいう人いちいちつっかかってくるのだるいな。



「やだ、この人超めんどくさい」

「あっはは、実莉はほんま命知らずやな」



ぼそっと本音を呟くと、大希は「それでこそ実莉やけど」なんて言いながら豪快に笑っていた。



「ええかクソガキ、いくら大希さんに色目使おうが、大希さんの一番は俺やからな」


不服そうな雅は私と目線を合わせると、至近距離で威嚇する。


この人、見れば見るほど美形だけど、若頭大好きな猪突猛進タイプの残念なイケメンなのかなとちょっと思った。



「ご安心を、あとひと月もしないうちに東京に帰りますので」



目を逸らしがちに返答すると、大希がわざとらしく「ええ~?」と声を発する。



「帰らんで、その間になんとか惚れさせるから」

「火に油注ぐこと言うな!」



冗談でもこの状況で言うバカがあるか!



「……ああ?」



ほら見ろ、雅の綺麗なお顔が般若のように変貌してガンを飛ばされてまくっている!


もう勘弁してよ、私は早く東京に帰りたいだけなのに。


そんな中、壱華は終始チンプンカンプンといった様子で首を傾げていた。
< 531 / 807 >

この作品をシェア

pagetop