スカーレットの悪女

実莉の涙

あっという間に西雲に来て2週間が過ぎた。私は朝から西雲の屋敷を走り回っていた。


やることがなさすぎて広い屋敷の掃除を買って出たのだ。


ちなみに壱華は生理が来てしまって体調が優れないらしく、あたたかくして休んでもらっている。



「いやぁ、小さいけどよう動く子やな。助かるわありがとう」



掃除係は元々バリバリヤクザとして働いていた60過ぎの引退した人たち。


入れ墨が入っていたり、小指はなかったりするからまともな仕事の再就職先がなく本家に置いてもらう代わりに雑務をしているらしい。


確かにこれだけ広かったら掃除係は絶対必要だよね。


最初は「小娘に任せることなんてないわ」って言われちゃったけど、大阪のおっちゃんは元々世話焼きだからやる気を見せたら認めてくれた。


今日は長い廊下の雑巾がけをした。すっごい疲れたけど童心に帰って楽しかった。



「腰痛くなったやろ。モップ使えばええのに」

「はい、さすがに疲れたので他の箇所はモップ使います」

「無理したらあかんで」

「ありがとうございます」



私が笑顔ならおじさんたちも優しくしてくれる。


さすが作中屈指の美少女設定。この笑顔で落とせなかった男は今のところ志勇だけだ。


西雲の人々とは短い付き合いだけど、こういう時こそ媚びを売るのは大事だと思う。
< 534 / 821 >

この作品をシェア

pagetop