スカーレットの悪女
「えーっと、この後応接間の掃除が……」



仕方ない、掃除を理由に逃げよう。



「時間あるよな?」

「っ、はい!大丈夫ですよ連れてってください」



しかし、おじさんが近づいて来たタイミングで大希が脅したから、掃除に逃げるという手段が使えなくなってしまった。


そうして私は半ば無理やり大希の部屋に連行された。



「家政婦の真似なんてせんでええやん」

「だってヒマなんだもん」



大希は文句を言いながらキッチンに立ってお湯を沸かしている。


次第に香ばしい匂いが漂ってきて、コーヒーを淹れてくれるつもりなのかなと思った。



「せやけどおっちゃんに愛想振りまく必要ないやろ。俺には笑いかけてくれんくせに」

「大希は怪しいから」

「あー、信頼すらしてへん感じね……こりゃ手強いわ」



何にイライラしてるのかと思ったら、私が大希以外には笑いかけるからそれが気に食わなかったらしい。



「まあええわ、それが聞きたかったんやないし」



大希はコーヒーを注いだカップとソーサーを持ってきて、私が座っているソファの前に置いた。
< 537 / 807 >

この作品をシェア

pagetop