スカーレットの悪女
獣のような獰猛さと、妖艶さを兼ね備えた危険な微笑み。


本能的に身じろぎした瞬間、唇に触れた感触と接近した大希の顔。


吐息が鼻先にかかって、唇が重なったのだと分かった。


キスされたと発覚して、私の頭は疑問であふれかえっていた。


なんでキスしたの?その笑みはどういう意味?それで私、なんで拒めないの?


頭では早く拒まないと、そう思っていても、体が受け入れてしまったのならどうしようもない。



「……」

「拒否せえへんの?続けるけど」



大希は無抵抗な私を不思議に思って首を傾げる。


その瞬間獲物を捉えたような目つきに変わったから、距離を取ろうとしたけどさすがに遅かった。


大希は再び顔を近づけ、私の唇を甘噛みする。


すると勝手に口が開いて、その隙に大希の舌が口腔内に侵入してきた。


突き飛ばそうにも密着して強く抱きしめられているから逃げられない。


未知の感覚に背筋がぞくぞくして動けない。


コーヒーの匂いが鼻を抜けて、蹂躙される圧迫感すら気持ちいいと思ってしまった。
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