スカーレットの悪女
「ん、ふぅ……」

「ちっさい口やな」



息は続かず吐息をこぼす私を見て大希は笑った。



「っ、やめ、て」

「無理、もっと欲しい。口開けて」



口を開けろと命令される前に、酸素を取り込むために勝手に口が開いてしまった。


再び舌先が絡まって深いキスが始まり、形容しがたい多幸感すら覚える。


なんで?どうして強く拒否できないんだろう。


まるで私が望んで大希を受け入れているみたいだ。



「いい子やな、実莉」


「っ、やだ……」



言葉の端々に愛しさを感じて変な気分だ。


いっそ性的な目で見てくれた方がせいせいする。



「大希、出かける時間ですが……おっと」



と、その時大希の背後から赤星の声が聞こえた。


大希が唇と離したからぎこちなく首を回すと、そこにいつもの仏頂面の赤星の姿があった。
< 546 / 807 >

この作品をシェア

pagetop