スカーレットの悪女
「うわぁぁ!離れてよ大希!」



正気に戻り、私は叫びながら大希の膝から飛び降りた。


壁際に逃げ込むと、大希はきょとんとした顔で口を開いた。



「もしかして初めてやった?」

「最っ悪……」



まったく持って図星だ。そしてファーストキスがこいつだったなんて失態にもほどがある。


私はごしごしと唇を擦って感触を忘れようとした。



「こらこら、そんなに擦ったらあかんて。唇腫れ上がってまうやろ」

「うるさい!」



赤星が絶妙なタイミングで来てくれたのが唯一の救いだ。


彼がいなかったらやばかった。この節操のない虎の餌食になるところだった。



「先方に適当言って出直しましょうか?」

「かまへん、十分堪能できたしもう行くわ」



赤星は無駄な気遣いを見せたけど、大希はにやりと笑って私と目を合わせた。



「実莉、帰ったら続きしよ」

「絶対しない!今のは事故!あと、今日は壱華と一緒に寝るんだから!」

「ありゃ、警戒されてしもた」



私は混乱のあまり大希の部屋を飛び出し、屋敷の中を行く当てもなく走った。


最悪だ、よりによって大希に隙を見せるなんて。


しかもキスされて嫌じゃなかった、むしろもっとあの腕の中で抱かれていたいとさえ思った。


でもこんな感情、何かの間違いだ、私は絶対認めない!
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