スカーレットの悪女
side 壱華



「壱華、湯たんぽもらってきたよ。これでお腹あっためて」



西雲会に攫われて2週間と4日。


体調を崩して寝込んでいる間に、実莉は西雲の男たちの大半を味方につけた。


わたしはこの部屋から出る気にもならないのに、実莉は持ち前の明るさで積極的に周りと関わりを持って、こんな時でもわたしのために奔走してくれる。


この湯たんぽも、味方につけた内の誰かからもらってきたものなんだろう。



「ありがとう、実莉」

「大丈夫?まだ顔色悪いね。解熱剤もらってこようか」

「いいよ、これでも昨日よりはマシだから」



顔色が悪いのは、志勇と引き離されたせいだ。


わたしには家族さえ、実莉さえいればいいと思っていた。


だけど志勇がいないことでこんなにも不安で心細くなってしまう。


実莉は慣れない土地でこんなに頑張ってるのに。姉として不甲斐ない。
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