スカーレットの悪女
父親を亡くし、失意のどん底にいる悲劇の姉妹。


精神は不安定のはずだが、俺と対峙しても泣きもしなければ喚きもしない。


珍しく肝の座ったガキだった。


睨みを効かせるとビビっていたが、震えながらも堂々と振る舞うあの度胸は認めてやろう。



「兄貴、楽しそうじゃん」

「……あの女、どっちだろうな」

「何がー?」



すると助手席に乗っていた颯馬が前を向いたまま話しかけてきたため、弟の意見も聞いてみることにした。



「分かってないから逃げ出さねえのか、分かってて立ち向かおうとしてるのか」

「どっちでもいいけど、頭はいいのかも。
俺は引き離して相川壱華だけ洗脳すればいいと思うけど」

「あれが妹なら姉貴も油断ならねえ、頭はいいだろう」

「勉強できても頭の回転までいいとは限らねえよ」



荒瀬の頭の固いジジイどもの指示に従おうとしている颯馬は、危険因子だとして引き離そうとしている。


ったく、変なところで真面目だな。


これだから女に愛想尽かされんだよ。
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