スカーレットの悪女
と、その時、不意に望月さんの視線が私に向けられた。


何か見てはいけないものを見てしまった気がして目を背けようとしたけど、彼は片目をつぶってウインクをしてきた。


この人、よくこういう突拍子のないことをするなあ。


志勇より怖い部分があるのに、志勇より気さくなんて変な人。



「はあぁ!?この期に及んで壱華を落とそうとするとか何事!?」



実莉はすかさずわたしの視界を遮ってわたしの正面に立った。



「ちゃうちゃう、壱華は“気づいた”みたいやったから」

「気づいた?何に?」



驚いた。わたしの視線に気づいたの?


実莉に熱視線を向けていたはずなのに。


やっぱりこの人、相当観察眼が鋭い。
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