スカーレットの悪女
「本気ですか」



でも、認めたくない。わたしはもう覚悟を決めたけど、実莉には極道と全く関係のない場所で健やかに生きて欲しい。



「実莉に利用価値がないことくらい、壱華にも分かるやろ。本気やねん」



だけどそう言われてしまえば確かにそうなのだ。


実莉を奪ったところで、荒瀬に直接的な損失はない。


つまり望月さんは嘘偽りなく、本気で実莉のことが好きなんだ。



「それに散々計画を邪魔した実莉に対して、極山が報復せんともいい切れん。けど、俺なら護れる」



望月さんは正座を崩してあぐらをかきながらそう言い放った。


保証なんてないのにやけに説得力のある言葉だった。



「せやから、どうしたら振り向いてもらえるか教えて」



ヤクザらしく脅して実莉を自分のものにしてしまえばいいのに、彼はまともに恋愛をしたいらしい。


実莉の意志を尊重している、という風にも受け取れた。


望月さんの真摯な眼差しに、わたしは首を縦に振って協力することにした。
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