スカーレットの悪女
「い、いらない!」

「そう言うと思った」



突き返すと、大希は紙袋を受け取って中の箱を取り出した。


箱を開けると、一粒ダイヤのピンクゴールドのネックレスが入っていた。


ブランドの相場からしてウン十万は硬いだろう。


大希は自分で買ったのに興味なさそうにそれに視線を落とす。


と、次の瞬間箱ごと上に放り投げた。


放物線を描いて私の手元に向かってきたそれを落とすわけにもいかず、手のひらでキャッチしてした。



「物は大切に扱いなさい!」


「母ちゃんみたいなこと言うなあ。そもそも自分がいらんって言ったやん。返品するのめんどいから受け取って」



声を荒らげて口走ると素知らぬ顔で首をかしげられた。


ちなみに大希は母親のことを関西人らしくオカンと呼ぶのではなく母ちゃんと呼ぶ。


それに対してかわいいと思うようになった。まずい、かなり末期かもしれない。



「それやったら控えめで主張せんし、色味的に壱華にもらったアクセサリーも一緒に付けられるやろ」

「なんのつもりなの?」



大希はその質問に、一切の迷いなく澄ました表情で口を開いた。



「実莉に惚れてんねん」




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