スカーレットの悪女
「それに、俺じゃ実莉を守り切れない。ガキの俺にはその力がない」



いや、優しいからこそ諦めるのか。


理叶の父親、祥一郎さんは組長派の人間だ。


俗にいう“金獅子派”は、厄介な荷物の壱華と実莉を殺害しようと計画していた。


理叶は潮崎の時期若頭。


その立場で実莉と深く接すれば、実莉をより危険にさらすことになる。



「俺は実莉が幸せならそれでいい」



だけど理叶の決めたことだ。それ以上は口出しはしない。


小さくなっていく理叶の背中を見つめ、どう声をかけていいのか分からずその場に留まって立ち尽くしていた。
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