スカーレットの悪女
俺は心配になってその後を追いかけた。



「失礼します」



凛太朗は静かに入室すると、ソファに座っていた眼光鋭い狼に臆することなく持っていたものを手渡す。



「資料をお持ちしました」



荒瀬志勇は無言でそれを受け取ると不気味に笑った。


こんな顔、絶対壱華の前ではしないよな。


本能的にぞっとする笑顔だった。



「さて、どちらが先に魔王を捕らえる勇者になるだろうな」



追い詰めるのが楽しくて仕方ない、とでも言いたげだ。


彼はその笑みを保ったまま凛太朗に体ごと向けた。



「山城を捕らえたら殺させてやる。お前が引き金を引け」

「殺すのはもったいないです。ある程度生きる希望を与えて情報を引き出さないと。あの男のことです、生きるためならなんだって話しますよ」



復讐の手助けを提案する主に対して、凛太朗は反対意見を述べる。


山城に報復するために忠誠を誓ったって言ってたけど、すでに考えを変えて荒瀬にとって有利に動くように考えている。


幹部たちに凛太郎にはヤクザとしての素質があると言われている意味を痛感した。



「ほう、例えば?」

「殺さないことを前提に服役させればどうでしょう。そうすればサツもヤクザも躍起になって極山を潰しにかかるはずです」



冷静で柔軟な考えで、まるで昔から荒瀬に仕えているみたいだ。


でも極道の情勢なんてガキの考えることじゃないし、13歳の面構えじゃない。
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