スカーレットの悪女
「なんでおるんかって聞いてんねん、その口飾りなん?」

「鍵もらったから」

「はぁぁ!?人質の分際で?」



雅は嫌味全開で綺麗なお顔を歪めてガンを飛ばす。


あーあ、もったいないイケメンだなあ。


ガン飛ばすとその王子系の爽やかフェイスが崩れて魅力半減しちゃうよ。



「自分が姐さんになるなんて俺は絶対認めへんからな」

「姐さん!?だから、なりませんってば」



雅はどうも勘違いしているようで、事あるごとに姐さんになるのは認めないと目くじらを立てる。



「あ?大希さんの一途な恋心を無視するんか」

「もうめんどくさいこの人!鉄板出すからちょっとそこどいて」



否定したらさらにめんどくさくなるから、どうしたらいいのかさっぱり分かんない。


話題を変えようとミトンを持ってオーブンを開け、クッキーを取り出した。



「へえ、独創的でかわいらしいクッキーやな」

「出た~、京都流の皮肉」



雅はそれを眺めて笑顔で一言。


愛想笑いで皮肉を言うのってさすが京都の男って感じ。



「それもどうせ大希さんにあげるつもりやろ。その前に俺が全部食ったるわ」

「大希にあげないし!私と壱華で食べるの!」



大希を中心に世界が回ってる雅は、このクッキーを大希に渡すものだと信じて疑わず手を伸ばす。



「なんで雅が食べるん、俺にもちょうだい」



焼きたてだからやけどする、と思って雅の腕を掴んだはずが、その声がして雅は手をひっこめた。



「げっ、帰ってきた!」

「お戻りが早かったですね、大希さん」



顔をしかめる私と、対照的に満面の笑みの雅。


大希は「ふたりともただいま」と言いつつ私たちの頭を撫でて微笑んだ。
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