スカーレットの悪女
まずい、最近大希の手を拒めなくなってきた。


あんなに怖かったのに今ではその手で撫でられると気が抜けてしまう。



「クッキー作ったん?俺の分は?」

「焼きたてだから触っちゃダメ!」



大希も手を伸ばしたから身を挺してクッキーを守ると、その指先が私の頬につんとつついた。



「なら実莉触ろ」



両手で私の頬を挟み、軽く押しては離すを繰り返す大希。



「やだ、手が冷たい!」

「おちょぼ口で文句言うのかわいい」



やめろ私に触るでない!雅が怖い顔して睨んでるではないか。



「こうやって実莉のほっぺたもちもちできるのもあと少しやな」



大希は素知らぬふりをして面白いことになっている私の顔を覗き込む。


するとついに雅が動き出し、大希の腕を握った。



「俺のほっぺただってもちもちですけど!?」

「どこに張り合ってんねん」



唇を尖らせて抗議する雅に対して、大希が割と冷静にツッコミを入れるから少し笑ってしまった。
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