スカーレットの悪女
「絶対気が合うと思うんやけどなあ。同族嫌悪かな」



私の頬をつまんでいた大希は、腕を動かして後ろからハグをする。


と言っても身長差があるから捕獲された宇宙人みたいで恰好がつかない。


すると瞬く間に雅の嫉妬心に火が付き、恐ろしい形相で睨まれた。


負けじと歯をむき出しにすると、上から大希の笑い声が降ってきた。



「ふたり見てるとあれやな、チワワと柴犬って感じ」

「誰がチワワだ!」

「そうやな、実莉は犬ちゃうな。どっちかっていうと猫やもん」

「この泥棒猫が!」



チワワを否定したら雅に泥棒猫とか言われた。


何も盗んでないし。そもそも大希は私みたいなタイプが珍しいから囲ってるだけじゃん。



「だから、盗むつもりないってば!むしろいらない、返品する!」

「クーリングオフの期限は過ぎてんねん、諦めて」



とにかく大希の腕の中から抜け出そう。この男とのハグは危険だ。


なにせ体が大きくて物理的な包容力が抜群だから、心地よくて抜け出せない。



「離して大希!壱華にクッキー持ってくの」

「いきなり暴れ出すやん、ほんま気まぐれな猫ちゃんやな」



暴れたら当然強い力で押さえつけられ、成す術がなくて上を見上げて睨みつける。


大希は朗らかな笑みで私を見つめていて、惚れ惚れとする破顔にときめきを覚えて硬直してしまった。
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