スカーレットの悪女
「用事って何?」



大希とおしゃべりするのもこれで最後かもしれない。


そう思うと自然と足は大希の自室に向かっていた。



「実莉、おいで」



大希は自室のソファに座っていて、私を見かけると腕を広げた。


近づくとたぐり寄せ、そして胸に収めて抱きしめられた。



「もう抵抗なく俺の胸に飛び込むようになったなあ、ほんまかわええわ」

「だってハグしてあげないと追いかけてくるから」



飛び込んではいないから語弊がある。ただ、拒めなくなっていたのは事実だった。


大希は包み込むように抱きしめると、私の髪の毛に指を絡ませながら小さくため息をついた。



「明日で実莉とお別れやん」



切なさを含んだささやきに、心臓の辺りが少し痛い。


だめだ実莉、しっかりしろ。私にはまだ残された使命がある。


見通しの立たない恋路より、確証のある壱華の幸せを見守る方がずっとたおやかで平和な人生を送れる。


分かってるのになんで大希と一緒にいたいと思ってしまうんだろう。
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