スカーレットの悪女
「実莉、こっち向いて」



だから大希の一挙手一投足が気になって、どんな表情をしているのか、何を言いたいのか把握したくて顔を上げた。


甘やかな熱を憂う穏やかな眼差し。


私だけに向けられる特別な優しさに、いっそ溺れて流されたい。



「お願いがあるんやけど」


「なに?」



とうに分かっていた。


私はこの支配者の獲物であって、見初められたあの瞬間から運命の手綱を握られていたのだと。




「最後にキスしたい」



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