スカーレットの悪女
実直な願望を断り切れず、ただ呆然と大希の目を見つめる。


ここで断わらなければ、好きだと認めているようなものだ。


しかし声に出して拒否できないのが何よりの証拠。



「無言は肯定と見なすけど」



追い打ちをかけるような言葉に「いいよ」と口が動いた。


大希は私の頬に指を滑らせると、顎先を持ち上げて顔を近づける。


身構えて目をつぶると唇の感触が伝わった。



「世渡り上手なのに、こういうの慣れてへんのかわいいなあ」



愛しさに弾む声の中に、ほんの少し嘲笑が含まれている気がして目を開ける。


狙ったように唇を重ねられ、恥ずかしさに顔を逸らす。


しかし恥じらう姿に興奮を覚えたらしく、大希の目つきが変わった。


一見冷静なように見えて、瞳の奥では激しい熱がたぎっていた。
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