スカーレットの悪女
「もう起きてる」

「残念、目覚めのキスでもしたろうと思ったのに」

「最悪な目覚めだわ」



しかし、志勇レベルのセクハラ野郎だからそういうところは嫌い。


私のタイプはパパのような紳士的な男性だ。



「ツッコミは朝からキレキレやな」

「うざいからどっか行って」

「どっか行くからその前に答えて。ネクタイどっちがええと思う?」



着替えたいけど大希がいるからできない。


追い出そうとしたら、手に赤と青のネクタイを2本持っていることに気が付いた。


黒スーツに黒シャツだから、赤はいかにもヤクザっぽいな。


青の方が落ち着いて見えるかも。



「……青かな」


「じゃあこっちにしよ。実莉ネクタイやって」

「甘えないでよね」

「ええやん、最後なんやから」



最後を言い訳に私にネクタイをさせるつもりの大希。


そう言われると実感するというか、本当に私のこと好きなのかな、と少し疑ってしまう。


志勇はなにがなんでも離さないってタイプなのに。


いや、あそこまで束縛されると疲れるけど。



「大希って意外とあっさりしてるよね」

「ははーん、さみしいんやな、大阪に残ってくれてもええんやで」



だからって大希と添い遂げる気はない。


私は無言で首を振って「早く出て行って」と追い出した。
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