スカーレットの悪女
「なんで距離取ろうとするん」

「スーツ着てると近寄りがたい」

「かっこよすぎて?」

「黙って」



動揺が伝わらないようにカニ歩きで徐々に距離を取ったつもりが、大希は同じく横歩きで近づいてくる。


図星だけど絶対認めたくない。


口に出せばボロが出て好きだと伝わってしまう。


そうすれば大希はあの手この手でここに留めようとするはずだ。


横歩きしていた大希は、ふと周り込むと両手を広げた。



「何してんの?」

「実莉って俺のスーツ姿好きやろ。存分に焼き付けてええよ」

「いい、すぐ忘れるから」

「元気ないやん、さては俺と別れるのつらいんやな」

「そんなわけないっての!ようやく軟禁から解放されると思うと清々するわ!」



いつも通り接したはずが元気がないことをお見通しだ。


なぜ分かったのだろう。顔を上げると大希は目を細め「実莉のこと、この1か月で見てきたから分かるようになったわ」なんて嘘か本当は分からないことを言う。


でも大希に見透かされるのはなんか嫌だ。


だから奇をてらったことをして油断させようと、歯をむき出しにして威嚇しておいた。
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