スカーレットの悪女
「……」



一連のじゃれあいを見た司水さんは絶句。


目を見開いて驚いていた。


非道の覇王なんて呼ばれてる男にちょっかいかけるからびっくりしたのかな。


司水さんのそんな顔初めて見た。



「実莉はほんまお転婆やなあ」



しかし、頬をゆるませる大希を見て彼は胸を撫で下ろす。



「おかえりなさいませ、壱華様、実莉さん」



そして改めて私と壱華を出迎えてくれた。


優しい笑顔が懐かしくてこみ上げるものがあったけど、安心して泣くのはまだ早いと思ってぐっとこらえた。


ここには今日、荒瀬の重鎮たちが一同に会して覇王を待ち構えている。


大希が何を企んでいるか分からないから、手放しに喜ぶのはまだ早い。


靴を脱ぐ大希を見ながら一足先に玄関に上がった壱華の後をついていこうとすると、司水さんに止められた。



「実莉さんはあちらの応接間でお待ちください」

「あ、はい……」


のけ者にされた気分だったけど、少し考えれば分かること。


そうだよね、私は壱華のおまけみたいなものだから会合に参加するのはお門違い。


大希を交えた集会が終わるまで大人しく待っておくしかないか。
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